中国花映塚コミュニティインタビュー <1>「場」について

 

中国の花映塚コミュニティについて、FSXさんにインタビューしました。

 

地理的な近さの割にこれまで日中の交流は少なく、当地でどのようにこのゲームが遊ばれてきたのかもよく分からないままです。今回、10年以上中国の花映塚コミュニティに関わっているFSXさん(@fairy_tiera)を迎え、めど(@medotsu_)がインタビューしました。

 

手順としては、まず私が質問リストを送り、FSXさんに返答してもらいました。そこで浮かんだ疑問点・不明点について何度かやり取りをした後、インタビュー形式で私が全体をまとめました。脚注はすべて私が書いています。

 

インタビューはこれから三回に分けて連載します。
第一回のテーマは「場」。コミュニティはどのようなプラットフォームを使って交流してきたのか。そこではどのようなやり取りがなされていたのか。攻略の情報源は何だったのか、といった話題を扱います。

 

最後に。中国の現役花映塚プレイヤーであり、コミュニティの取りまとめ役であるJumboさんも、中国花映塚勢の現在について教えてくれました。ありがとうございました。

 

目次 

  

① プレイヤーはどこに集まって花映塚をプレイしている?(例 Discord、Twitchなど)

これは時代によって違いますね。DiscordとTwitchについては両方とも中国のネットワークからアクセス制限されているため、国際交流でしか使わないです。

 

国内でのコミュニケーションの場合は、花映塚のリリース以来ずっとある場所としては「QQ」*1のグループチャットです。

 

しかし時代によってグループの場所は何回も変わってきました。基本的には「アクティブなプレイヤーたちがグループを作る。時間が経つにつれそのプレイヤーたちがだんだん遊ばなくなる。すると新たなアクティブな人たちが新しいグループを作る」ということを繰り返しています。

 

チャットグループのメリットとしては、対戦募集がTwitter掲示板よりずっと便利という点にあります。メッセージを早く見てもらえるし、対戦で不具合があったときに即時に語り合うこともできます。

 

また、2015年くらいまで「Doujinstg」という掲示板に、「花映塚」という専門のサイトがありました。そこでは主に対人戦を、また対CPUもある程度やっていました。コミュニケーションもあったし、リプレイは添付ファイルとして保存されていました。

 

わたしが「東劇」*2のリプレイをもらったのもここでのことです。数年前めどさんにお送りした「WD」氏のリプレイ*3もそこからダウンロードしたのです。しかし新しいプレイヤーたちはなかなかその掲示板に入ろうとせず、だんだん引退したプレイヤーたちの休養地になってしまって、残念ながら今はもう無くなっています……。

 

同じ時期に「百度贴吧(中国語、baidutieba)」*4というサイトにも一部のプレイヤーが集まりました。このページは恐らく日本にいない形のページですが、ミニ掲示板と考えれば大丈夫だと思います。掲示板の機能はほとんど備わっていました。しかし2015年から「百度贴吧」の運営や管理が杜撰になり信用をどんどん失い、利用者数が急激に減ったことで、とうとう荒れてしまいました。

 

以上のような事情で、2020年現在、中国で一番頼もしい場所はやはり「QQ」のグループチャットです。

 

ちなみに大学のサークルでも遊ばれていますよ。2019年に大学でやっているオフラインの大会に行ったことがあります。初心者や少しだけ興味がある人が多数のようでした。わたしは仕事関係で週末に行われた大会へは行きませんでした。

 

② 中国の花映塚コミュニティはどのような歴史を持っている?

わたしが花映塚を始めたのは2010年で、その時期こそ花映塚が盛り上がっていたと感じます。そのあとは2010年(それ以前に遡ってみても)ほど盛り上がったことは無いと感じています。歴史については、①に書いたとおりです。

 

③ これまでに他の国のコミュニティと接触・交流することはあった?

よく付き合った他の国のひとは、フランス人のDagoth2huさん(@DagothUrTH)しかいないです。それ以外やはり日本の方に接触することが多いです。

 

④ 中国のコミュニティで使われるネタはある?

[例えば日本では、1Pカラーの白てゐ派と2Pカラーの黒てゐ派に分かれてプレイヤー同士が争っているという身内ネタがあるが、]「白てゐ派」と「黒てゐ派」は日本特有のネタかもしれないですね。


中国でのネタというと、「2Pカラーが神秘的な力を持っている」というのが一番流行っているでしょうか。これは文字通りの意味で、2Pカラーを使うとそのプレイは運がよくなり、いい成果を出せる確率が高いという伝説です。

 

他になにかあるかというと、わたしが作ったもので、ふざけるというか冗談ですが、「各キャラの使い方を厚かましく表現した漢詩」があります。たとえば魔理沙なら「ボスが来ても決して慌てず、絶対ボスリバースしないでずっと撃破しろ」や、鈴仙とチルノでは「ずっと画面の上部で開花を維持し、相手が降参するまで待つだけ」や、霊夢は「画面の底で左右を走り回り、C2のときしか上へ行かない」など。もちろん全部冗談ですが、面白いからすぐに広まりました。

 

⑤ 中国で花映塚の攻略同人誌が出されたことはある?

残念ながら、中国で発行された東方シリーズの同人誌は「永夜抄」と「風神録」しかありません。


しかし日本で発行された「アル花ディア」という攻略本*5は中国で広く流通されています。攻略本の作者には申し訳ないですが、わたしが最初その本を読んだのは電子版(海賊版)で、日本に留学してから中古の本を入手しました。


「アル花ディア」のチャプター1、2と4*6は既に中国語に訳されていますが、文字数が多いためか残りの部分は日本語のままです。

 

⑥ 攻略の情報源にはどのようなものがある?

まず5番について少し補足しておこうと思います。攻略本は無いのですが、攻略の文章はかつてありました。①で参照した「Doujinstg」という掲示板や「百度贴吧」などに、プレイヤーによる攻略文章が残っていました。しかしどちらのサイトも荒れてしまったので今はもう見れないことが多いです。

 

今でも見られる攻略のような文章といえば、花映塚専門でなくて、東方シリーズを主に扱う掲示板で見たことがあります。

 

そして「bilibili」*7という動画サイトで攻略の動画を作ったうp主は最近でもいます。わたし自身も「bilibili」で中国語の攻略文章を少し投稿しています*8

 

情報源といえば、やはり一番活発なところはグループチャットです。コミュニケーションもリプレイ共有も盛んですが、やったあとログがすぐ流れてしまうことが多いと思います……。同じ話題を何回も言ったうえでまとめてくれる人は少ないような気がします。

 

(つづく)

 

*1:テンセントが運営している中国のインスタントメッセンジャーソフト。

*2:2006年から2010年まで、年に一度行われていた大規模オフライン大会。花映塚萃夢想、緋想天プレイヤーが100名以上集まった。

*3:「WD」というスコアネームで登録されたリプレイ群。2008年末にプレイされたもので、妖夢(CPU、Lunatic)を相手に、魔理沙を使って28分37秒、てゐを使って29分1秒耐久している。中国でもかなり昔から流通していたそうだが詳細は不明。情報求む。
2021/01/11更新:WDさん=ウンババさん、とのことです。

https://twitter.com/pingval/status/1348234254388404225

*4:Baiduが運営する中国のコミュニケーションプラットフォーム、掲示板。トピックごとのフォーラム(tiebaと呼ぶ)から成っており、花映塚tiebaもある。

*5:2008年にサークル「弾幕研究室」が発行した花映塚の攻略同人誌。A4サイズで106Pにぎっしりと攻略が詰め込まれている。残念ながら2020年現在は絶版。

*6:チャプター1:システム解説、チャプター2:基本攻略、チャプター4:ストーリー攻略

*7:bilibiliが運営する中国の動画共有サイト。動画だけでなく生放送やブログ機能も備えている。

*8:花映塚大叔的个人空间 - 哔哩哔哩 ( ゜- ゜)つロ 乾杯~ Bilibili https://space.bilibili.com/956017/article
彼が飼っているうさぎの動画を観ることもできる