DEHANA紹介⑥「外へ!」
いきなりですがお知らせです。9月10日(金)の夜から、DEHANA電子版(PDF)の販売を開始します。書籍版と異なり全ページフルカラーです。また章や見出しごとにしおりが付いており、目的の記事を探しやすくなっています。PDFで読みたいという方はぜひぜひお求めください!
さて、これまで連載してきたDEHANAN本誌の紹介は今回でおしまいです。ラストは第三章「拡げる」について。ここでは、ふつうにストーリーモードを遊んだり対人戦をするのとは違う遊び方を紹介しています。16年間でコミュニティが発明してきた遊びの軌跡です。いわば花映塚の可能性を「拡げる」章であり、ここを読むことで自分なりの楽しみを見つけられるようになっています。
今回は記事ごとに見ていきましょう。
目次
- 花映塚のいろいろな遊び方
- 花映塚のバグ事情
- 「夢時空」から見た「花映塚」
- オンラインとオフラインの対戦環境の違いとその対策
- オンライン大会開催ガイド
- 海外の花映塚コミュニティレポート
- 用語集2021
- 花映塚オフ・大会の歴史
花映塚のいろいろな遊び方
章の最初に配置されているとおり、様々な遊び方をざっくりと紹介しています。全体の見通しをつけるための記事で、もっと知りたいと思ったら、それぞれを詳しく解説した記事に飛べるようになっています。
ここに載っている、さまざまな記録のまとめも活用していただければうれしいです。スコアボード(Maribel Hearnさん)とタイムボード(めど)、また対人戦における最長対戦時間(p.121, yetさん)の表は、自分で遊ぶときの指標として役に立ちますし、仮想的な張り合いの相手として挑戦することもできるでしょう。
花映塚のバグ事情
花映塚の戦績記録ツール「花の記憶」など、花に関する各種ツールを開発しているろくしーさんによる渾身の記事です。花映塚のバグを一覧できる資料は他になく、具体的な再現方法まで掲載しているのがウリです。ろくしーさんはこの記事を書くために、日々花映塚を起動してはバグを探していました。
ちなみにDEHANAを入稿してから、花映塚にチートコードがあることが判明しました。「Result」ページで特定のコマンドを入れると、隠しキャラであるルナサとメルランが開放されるというものです。残念ながら本誌には反映させられなかったので、ここで紹介しておきます。
FYI: I've checked TH09 as well, and it also has a code, although it's not related to beer: inputting "dddssssqrr" on the "Result" menu unlocks all characters and extra mode.
— Cyrus Vorazan (@CyrusWVorazan) 2021年4月21日
ほんとに花映塚は底が知れないゲームです。オフ会のたびに、早く設営しては現地でキャラ開放のためにストーリーモードをプレイしてたのは何だったんでしょうね。
「夢時空」から見た「花映塚」
夢時空と花映塚の両方に精通している、中国のプレイヤーFSXさんの記事です。私からぜひにとお願いしてこのテーマで書いていただきました。
両ゲームのシステム上の差異に注目して、花映塚のルーツを探るという資料的な記事になっています。花映塚というゲームの、あの不思議な手触りがどのようにしてできたのか、それを理解する手助けになります。
また「夢時空」の手短かなガイドにもなっている点も見逃せません。夢時空はPC-98ゲームということもあり現在では遊ぶことが難しく、日本語で読める資料は多くありません。夢時空の楽しさや遊び方を伝える、貴重な内容になっています。
花映塚へ至る道筋という観点でいえば、実際には夢時空の前に「ティンクルスタースプライツ」があるわけで、そことの違いに注目してもおもしろいと思います。しかしそれはまた別の機会に。
オンラインとオフラインの対戦環境の違いとその対策
花映塚のオフイベントを長年オーガナイズしてきた柿桜さんの記事です。柿桜さんは、2018年に博麗神社社務所が主催した公式大会「東方コロシアム 花映塚編」の優勝者でもあります。なんと263名の頂点!こうした実績を持つ柿さんに、オフで全力を発揮するためのコツを伺いました。
ここで分析・解説されているのは、花映塚に限ったことではありません。ふだんと異なる環境で「本番」を迎えなければならないときにいかに安定したパフォーマンスを出せるか。柿桜さんの考え方は、他の場面でもきっと活用できるでしょう。
オンライン大会開催ガイド
執筆者、私。花映塚は、もーほんとうに厄介なゲームで、大会ひとつ開催するにもたくさんの困難があります。これまでのオンライン大会経験をもとに、オンラインではどういう問題が生じうるのかと、実際にどのように対応すればいいのかをまとめました。
大会とかあまり興味ないよーという方も、記事の最後にまとめた「「花映塚」というゲームが持つ特性」は知っておいて損はないと思います。こういう、プレイヤーが前提として了解していることって、なかなか言語化されてなかったりするので。
海外の花映塚コミュニティレポート
日本に16年の歴史があるならば、世界各地にも同じような歴史があるはず。じゃあ聞いてみよう、ということでインタビューしてきました。
詳しくはインタビューを読んでほしいのですが、世界各地で小さなコミュニティが生まれ、盛り上がり、そして解消あるいは合体していくプロセスの一端が語られています。やはり言語の壁は大きく、国というよりは同じ言語圏でまとまる傾向があるようです。
あとはネット環境がゲームの遊び方に与える影響は興味深いですね。ネットの速度が遅いと、操作遅延やラグが発生し、まともにゲームができなくなります。快適にネットで繋がれる範囲が、ひとつのコミュニティの範囲になる傾向が、もしかしたらあるのかも。そういえばゼロ年代では、日本国内でも距離が離れていると対戦が難しいということがあったようですよ。
用語集2021
合計192の花映塚用語を50音順で整理しました。項目には、必要に応じて参照先を付けているので、「索引」のように使うこともできます。何かを調べるのに使ってもいいし、だらっとゆるく流し見するのもよしです。私が好きなのは【や】の項目。
用語集を作るというのははじめての経験で、どうやって作ったらよいかを方法から考える必要がありました。思いつく単語をやみくもに出していくだけではきっとヌケやモレが生じることでしょう。
だから最初に単語のカテゴリを設定しました。大カテゴリとして「ゲーム内」と「ゲーム外」を考え、その下に小カテゴリを追加していきます。例えば「ゲーム内」の小カテゴリは「弾の名前」「エキストラアタックの名前」など、「ゲーム外」は「STG用語」「配信サイト」などです。これ以上小カテゴリが作れない、つまり「花映塚」全体をカバーしたと思ったところで、カテゴリごとに具体的な項目を書き出していきました。
ちなみに『アル花ディア』(2008)の用語集からも、いくつかの単語を収録しています。そのまま使えるものはそのままに、時間が経って内容が古くなったものは適宜書き換えています。
花映塚オフ・大会の歴史
誤解のないように改めて書きますが、ここに載っているのはこれまでに行われてきた花オフや大会の一部です。実際にはこれよりもっとたくさんオフ会が行われています。
私としてはA4の見開きでバーンとこの表を載せられて満足です。過去の記録を漁ったり関係者に伺ったりしてデータを埋めていったのですが、どうしても分からないところ・裏とりができないところが結構ありました。空欄になっているので、「俺は知ってるぞ」という方はぜひ自分でマスを埋めちゃってください。
以上、各記事の紹介でした。花映塚の拡がりを実感してもらえたでしょうか。過去から現在へ、国内から世界へ、花映塚の楽しさは今も拡がり続けています。
DEHANA紹介⑤「攻略本の華」
お久しぶりです。
なんだか間がかなり空いてしまいましたが、今回は第二章「究める」から「キャラクター攻略」「一人プレイ攻略」の二つを見ていきましょう。
目次
キャラクター攻略はトッププレイヤーの思考の宝庫
攻略本においてやはり「キャラクター攻略」は一つの華と言えるでしょう。しかし実は、DEHANAにはすべてのキャラの解説が載っているわけではありません。しっかりとした解説を書けるプレイヤーのいるキャラに絞って原稿を依頼をしました。実際、各キャラの全一クラスのプレイヤーが、各々の持ちキャラの攻略を書いています。それだけにクオリティについては自信を持っています。
ちなみに依頼については、こちらからはほとんどオーダーをせず自由に書いてもらったので、人によって書き方はさまざまです。見出しの立て方も、攻略の切り口も、テンションも全く異なります。
しかしそこには、キャラ攻略のベースとして、彼らが花映塚をどのように理解しているかが表現されています。各キャラの攻略は、当然花映塚全体の攻略を前提としているからです。これだけの人数のトッププレイヤーの、花映塚理解を一望できる資料は他にはありません。
例えばこれは偶然のことですが、「C0避け」というテクニックがnishiさん(霊夢担当)とふぁーさん(幽香担当)の、両者の記事に出てきます。もちろん事前に話し合ったわけではありません。トッププレイヤーの二人が重要だと思ったから、各キャラクター攻略の枠の中にもかかわらず書いたのであり、こういうところから「C0避け」がいかに大切なテクニックであるかを私たちは理解することができます。
フォーマットを統一することなく自由に書かれているということは、読み手は各記事ごとに構成からいちいち理解する必要があるということであり、読むのはなかなか大変でしょう。……すみません、ご読労をおかけします。何回でも書きますが、DEHANAを通読するのは並大抵のことではありません。自分のいまの興味に沿って、好きなように、つまみ食いをするように読んでいってもらうのが一番良いものと思います。
ティアリストの意義
ところで「キャラクター攻略」ではティアリスト(強さランキング)について詳述しませんでした。「用語集」の中で「~と語られることが多い」「~と呼ぶことがある」くらいの調子で書きましたが、断定系ではありません。人によって議論のあるところでしょうし、ほどほどにしておきました。
ティアリストは、様々なゲームで、リリースされてすぐに議論になるテーマです。花映塚においては、そもそもティアリストにどのような意義があるのでしょうか。
花映塚は非対称なゲームです。16人の性能の異なるキャラから2人を選んで対戦します。つまり最初から有利・不利が発生しています。そしてそのような有利・不利の状況認識から、勝つために自分の行動を変える必要が出てきます。
ここで、勝利を目指す行動を決めるためにティアリスト(正確には「相性の知識」)が必要となります。例えば「この組み合わせは自分が不利だからどこかで無理を通す必要がある」とか「有利だからスペルポイントは切らずに開花状態を維持しよう」というように判断をするわけです。
そのうちに、そこに色々と人間的な意味付けがなされていきます。どのキャラが一番強いのか、たとえプレイをしていなくてもそういう知識を得られると私たちはどこかで満足するものではないでしょうか。さらに一歩進んで、「強いキャラを使っているから勝って当然だ」とか「相性有利で負けたら恥ずかしい」というように考えるプレイヤーも出てきます。そんなことはゲームの中にはどこにも書かれていないのに。
こうした「おしゃべり」がコミュニケーションや楽しみに繋がる限りではいいのですが、プレッシャーや押しつけになるようであればむしろ害でしょう。これはとても実践的な(普段から私たちが直面するような)問題で、ほどほどのところを知る必要があると思っています。コレガムズカシイ。
思い立ったらすぐ遊べる「一人プレイ」
さて「一人プレイ」の項目では、スコアアタック・LunaCPU撃破・縛りプレイ・RTA(リアルタイムアタック)を扱っています。こちらもやはり、それぞれのカテゴリの全一クラスのプレイヤーが寄稿してくれています。
一人プレイの良いところは、思い立ったらすぐに実行できるところでしょう。対戦であれば相手を探して、時間を合わせて、やりとりをしてとなかなか大変ですが、一人プレイはやりたいときにやりたいだけ遊ぶことができます。
興味を持った楽しみ方を見つけたら、軽く読んで実行してみることをおすすめします。ポイントは、ガチガチに読み込まなくてもよいということ。私などは、アドバイスを一つだけ携えてワンプレイするのが楽しいです。成果が出るし、段階的に理解も進んでいきます。
ちなみに、花映塚のスコアアタックは近年進展が目覚ましい分野です。2008年の花映塚攻略本『アル花ディア』では「他の東方作品と異なり運要素が強すぎるので、スコア稼ぎメインの人はあまりいない…と思う」(p.11)とされていたのですが、2010年代を通じて独特の攻略が確立されてきました。
ちょうど最近、「東方ワールドカップ2021」というイベントの中で花映塚のスコアタ対戦が行われました。「スコアアタック概論」を読んだら、合わせて録画を見るとより楽しめます。ちなみにWest代表で出場しているDagoth2huさんには、「スコアタ各キャラクター攻略」の「妖夢」攻略を書いていただいています。
スコアタはまた、DEHANAの製作期間にも攻略が進みました。るろるぅさんにより、花映塚でも「状況再現」というテクニックが可能であることが分かりました。CPUの挙動が解明され、「三つの弾避けモード」として明確に言語化されました(p.97のコラム)。原稿を書いている期間に、全一スコアがいくつかのカテゴリで更新されるようなこともありました。なかなかホットな分野になっています。
では今回はこんなところで。
DEHANA紹介④「花映塚の攻略って何を書くの?」
ご無沙汰しております。
DEHANA販売開始から一ヶ月弱経とうとしていますが、おかげ様で売れ行きは上々でほっとしています。倉庫在庫がもうほとんどなく、補充するとなるとそれなりに時間がかかるので、気になっている方は早めにポチっちゃいましょう!
前回からだいぶ時間があいてしまったのですが、紹介でしたね。今回は第二章「究める」を見ていきましょう。この章は「システム解析」「戦略指南」「キャラクター紹介」「一人プレイ攻略」の4つのカテゴリからなります。今回は主に前二つのカテゴリについて。
目次
花映塚の攻略文章とは
この本を作る前から、ゲームの攻略文章とはどういうものだろうとおぼろげに考えていました。私は花映塚以外にもいろいろとゲームを触ってきたし、長い時間遊んでいるタイトルもあります。そういうゲームについて何かを書くときに、どのような文章が「攻略」になるのだろうかと、たびたび思います。
「攻略」の定義を問うているように捉えられかねませんが、いま話したいのはどういう文章がプレイヤーにとって望ましいかという価値論的な問題です。自分が読者だったらどういう攻略文章がうれしいかな、というくらいの問いです。
例えば関連するデータを集めればそれで攻略文章になるのか。花でいえば、解析勢の努力でかなりの部分が数値まで明らかになっています。キャラクターの判定の大きさ、白弾などの「おくりもの」発生のメカニズム、リリーが降りてくるタイミング等々。しかしデータを網羅したところで、それで攻略が完了したとは、どうも言えないような気がします。それは物理法則を完全に理解している人がいたからといって、その人が野球をうまくプレイできるわけではないということと類比的です。データそのものよりも、それを使っていかに上手にプレイできるかのほうが、攻略においては重要ではないかと思います。
だからといって「弾に当たらないようにしよう」といった、ゲームのルールをそのまま書いてしまうようなことでもないでしょう。「花映塚がうまくなるためにはどうすればいいですか?」に対して「弾幕に当たらなければいいんだよ」というのはジョークにはなっても回答にはなりません。このように書けばこそ「そんなのは当然だ」と思われるかもしれませんが、どうも攻略を書いていると、気が抜けてそのようなふわふわした話になってしまうことがあります。
例えば「交差弾は危険だから意識しよう」というのはどの程度攻略になっているでしょうか。まったくの無内容ではないにせよ(他の弾幕ではなく「交差弾」に注目するように言っているから)、少し不親切な気もします。DEHANAの135頁、「用語集2021」の「交差弾」という項目ではこう書いています。「交差弾はいま閉じている部分が一瞬後には開くので、閉じている部分を目指して移動すると避けやすい」。実はこの一文はそにつくさんが提案してくれたもので、そのまま採用しました。「交差弾を意識(して避ける)」ということの内実が具体的に書かれており、良い攻略文だと感じます。
こうした話に明確な着地点があるわけではないのですが、とりあえず「プレイしているときの自分の意識」が攻略文章の中心にあってほしい、くらいのことは言えるのではないかと思います。プレイのその限定された時間の中で、どういうことを考えればよいか、そしてどういうことは考えなくてもよいかをはっきりさせることが重要だ、と言いたい。攻略の文章では、客観的なデータとそれまでの自分の経験を総合して、プレイ中に意識することを絞ることが目標になるのだ、ということです。
果たして私の攻略文章がこういう目標を達成できているのかは読者の判断に委ねるほかない(常套句)のですが、……実際どうでしょう。できてるのかな。あんまりできてない気がするな……。何回も読み返しているとだんだん自分が何を書いているのかよく分からなくなってくるので、常套句とはいえ本当に実際に他人にどう読まれているか次第だなと思うところです。まあそういうことが私の目標でした。
「データ解析」と「戦略指南」
「データ解析」の記事二本は、表に現れてこない内部データを扱っています。このあたりは特に、データをいかに実践で活かすかという課題のもと編集していました。単なる数値の集積ではなく、実際のプレイのなかで、判断や操作に効いてくる知識としてデータを整理しました。ちなみに38頁にある「コンボ要素一覧表」はping値さんのアイデアで、これのおかげで一気に見通しが良くなりました(感謝!)
「戦略指南」も二本の記事があり、「花映塚というゲーム(のシステム)をどのように理解するか」を解説しています。戦略指南と銘打っているのに奇妙に響くかもしれませんが、必ずしも「どうしたら勝てるか」ではないのです。それ以前の部分に焦点を当てています(てんこさん、違ってたらごめんなさい!)
花映塚は要素が複雑に絡まりあっている、カオスで捉えどころのないゲームです。だから「なんか勝った/負けた」となりがちです。「戦略指南」の記事を読むことで、ふだんのゲームプレイから何が勝敗を決したのかを理解できるようになります。私としてはそのあたりが理解できるようになってからは、勝っても負けてもゲームプレイに納得できるようになりました。もちろん負けたら悔しいですが、よくわからんけど負けたという状態よりも、あれが原因で負けたと分かっているほうがよっぽど精神的に楽です。因果がはっきりしていてほしいんですね。とても人間的。
あとは観戦のポイントが分かるという効果もあります。しばしばすごいゲームプレイを前にして「素人目にもすごいと分かる」と言われますが、これは実際のところ「よく分からないけどなんかすごそうだ」という感覚のレトリックであることが多いでしょう。そういうプレイに付くコメントを見て、「そこ、驚くところじゃないんだけどなぁ」ってことありませんか?(驚いてもらえているのでそれはそれでいいんですけど) 花映塚はどこを見ればいいのか分からないという声を聞きますが、観戦のポイントが分かるとより面白く観られるようになります。
本を「縦に」読む
ちなみに私が書いた攻略記事には縦のつながりがあります。第一章の「マニュアルリライト」で入門して、「ミスミスからはじめる花映塚」で初心者を脱し、第二章の「「防御型」という立ち回り」で中級者以上へ、とステップアップできるようになっています。戦略については隠していることはなく、自分が書けるだけのことを書いたつもりです。
一連の内容を同じ人間が書いているのである程度読みやすくなっていると思います。厚い本でも一人の人間が書いている本って、後半にいくにつれてブーストが掛かり読みやすくなるということがありますよね。逆に共著とかで色々な人が書いているものを読むのは結構たいへんです。まさにDEHANAがその類なんですけども。
私のパートに限らず、本文を串刺しで読むというのはDEHANAには合っています。例えば小町の銭弾が避けられないと思うなら、「キャラクター攻略」の記事郡から対小町の部分だけを拾い読みしてみるとか。きっと良いアドバイスが見つかるはずです。
今回はこんなところで。
DEHANA紹介③「花映塚はいま、ネットのどこで遊べるか」
DEHANAがBOOTHで販売開始しました!
GW中はBOOTHの倉庫が止まっていたようで、これから順次発送されていくようです。もし届いたらツイートなりなんなりしていただけると大喜びで見に行きます。倉庫在庫が少なくなりつつあるので買いたい方はお早めに~。
今回は前回からの流れで第二章を取り上げるつもりだったのですが、そろそろDEHANAが皆さんのお手元に届くことを考えて、一度脇道に入ります。今日のテーマは花映塚をネットのどこで遊ぶか。本誌を読んで、もしかしたら誰かと対戦したいと思う方がいるかもしれません。また、しばらく花から離れていていまはどこで対戦が盛り上がっているのか気になる方もいるかもしれません。そうした方々に現在のオンラインコミュニティの在り処や状況を紹介しようと思います。
DEHANAそのものの紹介というよりも、DEHANAがどういうところから生まれてきたかを紹介するということですね。本誌でもところどころで触れているのですが(主に「用語集」p.131-)ブログでも一度まとめておきます。
目次
ネット対戦には準備が必要
まずは初めて花映塚に触れる方向けに、ネット対戦について軽く説明しておきます。2005年のゲームということもあり、ネット対戦には色々と事前準備が必要です。詳しくはこちらのページを見てください。
簡潔にまとめると、①花映塚本体をver1.50aにアップデートする ② adonis rev4かrev5をダウンロードする必要があります。ここまでできていれば誰かに対戦を申し込むことができます。ただしホスト側(対戦を受ける側)になるためには、更に「ポート開放」という作業が必要になります。
対戦募集にはよく使われるテンプレートがあります。
【adonis】rev4(かrev5)
【IP】101.128.182.184
【ポート】17723
【対戦可能時間】3戦
【難易度】Luna
募集するときはこのような情報を書き込んで待機します。「adonisのバージョン、グローバルIP、ポート番号」は接続するために絶対必要なので忘れないこと。こういう形式の募集があったら、接続する前に特にチャットをしたりメッセを送る必要はありません。突撃しましょう。対戦が終わったら「ありがとうございました」くらいの挨拶はした方がお互い気持ちよいかもしれません。このテンプレートはどこで対戦するときも同じように使えるので覚えておきましょう。
花映塚オンラインコミュニティの現在
では本題ですが、ここから紹介することはあくまで私に見えている範囲のことであるとお断りしておきます。
そもそも現在、どのサイトやサービスでもめったにマッチングしていません。事前にお互いに誘い合わせて対戦することはもちろんありますが、「誰でもいいから対戦しよう」という募集に相手が見つかることはあまりありません。それゆえ募集もほとんどありません。
だから対戦シーンで「現役」といえるようなプレイヤーは日本にはいないかもしれません。そもそも対戦シーンといえるようなものがないのだから。オンライン大会も長いこと開催されていません。
東方Wikiには「花映塚ネット対戦FAQ」というページがあります。よくまとまっていて有用なのですが、一部の情報は古くなっています。特に「対戦相手を探したい!」という項に挙げられているサイトやサービスでは、現在はほとんど対戦を期待できないでしょう。
いくつか補足しておくと、「東方幻想板」(したらば掲示板)にはかつてネット対戦スレがあり、100スレ以上続いていました。「幻想板」は今では閉鎖され「東方綺想板」 に移行しましたが、ネット対戦スレはもうありません。ニコニコ生放送やStickamはもちろんまだ存在し、コミュニティページも残っていますが廃墟のようになっています。「東方弾幕実況スレ」(なんでも実況VIP)もなくなりました。Peercastでは年に数回、花映塚が配信されることもあるそうです。
対戦を期待できそうな場所
こういう状況なのでなかなかマッチングは難しいのですが、それでも辛うじてまだ相手が見つかりそうなところを2つ挙げておきます。
① Discordの「花映塚ネット対戦サーバー」
チャット・音声通話サービスのDiscordに、ネット対戦を主目的とした日本人向けのサーバー(部屋)があります。2018年に立ち上がったサーバーで、現在81名が参加しています。#matching というテキストチャンネルで対戦募集ができるほか、雑談用の #smalltalk や一人プレイ攻略用の #vs-cpu といったチャンネルがあります。
これは #th09bot を含むツイートに反応してRTしてくれるbotです。対戦したいときは、募集テンプレにこのハッシュタグを付けてツイートします。botのフォロワーはRTされた募集を見て自由に対戦を申し込むことができます。ここしばらく募集はありませんが、一時期はとても盛り上がっていました。
あと一人いればいい
ウクライナの花映塚プレイヤーであるCyrusさん(@CyrusWVorazan)に以前、ゲームコミュニティには「フェニックスサイクル」があると教えてもらったことがあります。普段は誰もそのゲームを遊んでいないけれど、アップデートや大会・イベントなどがあるとこぞってみんなが集まって一時的に盛り上がり、しばらくするとまた誰も遊ばなくなる、ということの繰り返しを表現する言葉です。「花映塚のロシア語圏コミュニティはフェニックスサイクルにある」という話を数年前に伺ったのですが、日本の花映塚コミュニティはこのサイクルすら回らなくなっているといえます。みんなで集まって遊ぶということが今やありません。2005年の発売から2010年代中盤までのコミュニティの盛況を記憶している方々は少し寂しく思われるかもしれません。
しかし私はこうしたことを必ずしもネガティブに捉える必要はないと思っています。長く遊んでいれば興味が薄れていくのは人間として自然なことです。現実生活の変化もあれば、興味の移り変わりもあるでしょう。花映塚にはアップデートもないわけで、時間が経つにつれて一つのタイトルへの熱量が下がっていくのはむしろ当然のことです。
そもそも対戦するためには「みんなが集まる」必要はありません。花映塚は1対1のゲームですから、自分以外にあと一人いさえすればよいのです。マルチプレイゲームではしばしば「※友達は別売り」といわれることがありますが、同じ興味を持つ人をあと一人探すというのは、どうしようもなく高いハードルではないでしょう。
私が小学校低学年の頃、読書をしているときに、この本をいま同時に読んでいる人は世界に何人いるのだろう?同じページを開いている人はいるだろうか?などとたびたび想像していました(目の前のテキストに集中できない子どもだったのですね)。2021年のいまでも、あなたと同じように花映塚に興味を持つ人はきっとどこかにいるのだと思います。
それにコミュニティは唯一ではありません。実際私は大学や社会人の東方サークルの類はフォローできていませんし、海外にまで目を向けるならもっと色々あることでしょう。はじめに断っておいた通り、ここまで書いてきたことはあくまで私の見える範囲のことです。
ということで、この記事で書いたところ以外にも対戦できるところがあるよ!なんて情報があれば教えてください。そういう情報はどんどんシェアしていきたいと思っています。
ちょっと脱線してしまいましたが、以上、ネットのどこで花映塚を遊べるかでした。
DEHANA紹介②「集まって遊ぶときにそばに置いておきたい本」
自分が昔ながらのアナログ人間だからなのか、はじめてのゲームを遊ぶときは手元に紙のマニュアルか攻略本があってほしいなと思います。新作の格ゲーなんかを何人かで集まって遊ぶときはだいたい負けたら交代で回していくわけですが、負けたときに手元に攻略本があると、パラパラとページを繰りながら「次はこのキャラでやってみよう」とか「次はこの技を多用してみよう」なんてことをさっと読み取って、次の対戦ですぐ試してみられるわけです。ぱっとページをめくって、さっと情報を得られるのがいいのでしょうね。ネットでページを繰る(遷移する)よりもずっと早くてストレスがありません(目次や構成がちゃんとしていればですが……)。DEHANAもそういう風に使われたらいいなと思いながら製作してきました。
というわけで必要なときに必要なページにアクセスできるためにも、本の構成をおさらいしておきましょう。本書は三章構成になっており、各章にさまざまな記事が収録されています。「始める」「究める」「拡げる」が章の名前で、前の二つはそれぞれ主にビギナー向け・中級者以上向け、「拡げる」は腕前に関係ない楽しみ方や文化の紹介になっています。「-める、-める、-げる」となっているので、この構造が多少は見えやすくなっているかもしれないですね。
第一章「始める」は更に二つに分かれていて、「マニュアル」「初心者指南」のカテゴリがあります。「マニュアル」は主に入門者向け、花映塚のルールを全く知らないプレイヤーがスムーズにこのゲームに入っていけるような記事が2本です。もうひとつは「初心者指南」として、初心者向けの実践的な記事が3本あります。
「マニュアル」部分はこの本の売りのひとつであり、何回でも書きますが、花映塚が初めてだ・やったことはあるけどよく分からなかったという方はここを読んでほしい。ここではゲームを「理解して楽しむ」ために必要な情報を網羅しています。10年以上遊び続けている私が書いているし、寄稿者様(こちらもまた10年選手、あるいはそれ以上)のチェックも入っているので自信を持っておすすめします。確かにネット上に情報はたくさんありますが、断片的だし質はまちまちです。本書を1冊持っておけば困らないというのは入門者には心強いでしょう。
中身も少し見ておきましょうか。
「マニュアルリライト」は、いまいち分かりづらいタイトルを付けてしまったのですが、要するに花映塚のプレイマニュアルです。公式にも当然マニュアルはあるのですが、あれだけ読んでゲームを理解するのは困難です。そこで頭から順に読んでも理解できるように項目を再構成し、マニュアルをリライトしました。説明内容に合わせて画像もふんだんに使ってますよ。
「キャラ紹介」でも画像をたくさん使いつつ、必要な情報を1キャラ1ページでコンパクトにまとめています。「移動速度は何ドット/フレームで、全キャラ中何位の性能か」とか「C1のダメージ量はいくらか」といった具体的なデータもしっかり盛り込んでいます。キャラ紹介ページは、同人誌としては大型であるA4判の利点が一番出ているところです。版面をいっぱいに使って画像とデータを詰め込みました。特に画像を大きく載せることができたので弾幕のスクショ集としても楽しめます。カタログ的にぼんやり眺めるもよし、キャラや弾幕の性質を調べるために見るもよし。どのレベルのプレイヤーにとっても有用なページになっています。
「初心者指南」のカテゴリには3本収録しており、それぞれ別の3人が書いています。見事にそれぞれ違う観点から書かれており、あなたが初心者であれば欲しい情報がきっと見つかるでしょう。
「「ミスミス」からはじめる花映塚」は私が書いたもので、もっとも一般的な初心者向けの攻略です。ミスティア同キャラ・マッチモードルナティックでランクマックス(3分30秒)生存するという具体的な目標を提示して、そのためにどうすればよいかということを書いています。ミスミスは花映塚の腕前を上げるための王道とよく言われてきました。意識するポイントを提示しているので、闇雲に回数を重ねるよりも効率的に上達できることと思います。
「STG初心者が上達するには?」は夕姫(@Y_MTR)さんの記事です。長年STGを遊び続けている夕姫さんに、初心者はどうすれば上達していけるのかを書いてもらいました。花映塚はSTGの一種なので、STGにおける攻略を活かすことができる部分もあるわけです。夕姫さんは単に上手であるだけでなく、自身の上達過程に強く意識を向けてきたプレイヤーであり、シューターであれば必ずや有益なものを得られるはず。モニタやコントローラなど、プレイ環境の重要性に触れているのも興味深いところです。
「他の東方原作STGと花映塚の意識配分の違い」は、そにつく(@Sonitsuku)さんからこのテーマで書きたいとオファーしていただいた一本です。そにつくさんは妖夢使いとして一線級のプレイヤーであり、「キャラクター攻略」でも妖夢の記事を担当してくれたのですが、花映塚以外の東方原作も究めています。その中で、東方原作をもれなく遊ぶけど花映塚だけは少し触って辞めてしまうプレイヤーを多く見てきたそうです。確かに花映塚は正規ナンバリング(th09)でありながら、必ずしも東方シューターから遊ばれているわけではない、というのは昔から言われてきました。こうした経験を活かして、どこに「躓きの石」があるかを明確に言語化してくれています。花映塚はふつうのSTGとは別ゲーであり、楽しむためにはこのゲーム特有の考え方を受け入れる必要がある。だけどなかなか、一人でそのことに気づくのは難しい。この記事はそんな厄介な花映塚を楽しむための橋渡しとなっています。
ということで初心者向けといっても内容は三者三様、さまざまです。自分が気になる記事から、あるいは気になるプレイヤーの記事から、気軽に読んでみてくださいな。
DEHANAの発売開始は5/3(月)、あと4日です!
ではまた!
DEHANA紹介①「メタに読む」
ご無沙汰してます、めどです。
しばらく前に入稿が済み、ようやく製本された同人誌が届きました。想像はしていましたが実物の存在感には圧倒されます。あと物理的に重い。数十冊入ったダンボールを持ち上げるのも一苦労です。通信販売の準備は順調に進んでいるので、発売日を楽しみにお待ちください。ストアページはまだできていませんが、予定どおりBOOTHで発売します。
対戦型2DSTG「東方花映塚」の最新攻略本"DEHANA"が完成、5月3日に販売開始します。日本のトッププレイヤー13名が執筆、世界中のプレイヤーも協力。ビギナー向けの記事も充実、今から始めても遅くない!A4判150ページの大ボリュームで花映塚を楽しみ尽くす一冊です!!
— めど (@medotsu_) 2021年3月27日
https://t.co/OPkoiJ6SaI pic.twitter.com/azGcbPpeJb
さて、これまでは「DEHANA日誌」というタイトルで製作の進捗や考えていたことを毎週書いてきましたが、これからしばらくはDEHANAの内容を少し掘り下げて紹介していこうと思っています。特設サイトにもいくらか情報は載せていますが、もう少し詳しくこの本について説明したいことがあるので。発売までの楽しみとして、あるいは購入検討の材料にしてみてください。
まずは本全体についてのざっくりとした話から。この本の製作は企画書を書くところから始めたわけですが、その後すぐに目次を作りました。寄稿してもらうというのは、「誰に」というのはともかくコンセプトとして決めていたので、全体を通して私が基本的な内容の記事を固めて、寄稿者にはやりたい放題やってもらおうというスタンスで組んでいきました。
例えば「各キャラクター攻略」は最初はフォーマットを決めてしまおうかとも思っていたのですが(基本性能、基本戦術、対キャラクター指南など)、書きたいようにやってもらうのが一番だろうということで一切オーダーしませんでした。だから「構成も含めて」その人の攻略記事として読めると思っています。特に大見出しや小見出しの立て方や、そこにどれだけの分量を割いているかなどから、その人が何を重要と考えているかが見えてきます、たぶん。
そういえば目次は上の特設サイトで公開しているのですが、具体的にどの記事を誰が書いたかはまとめていなかったので、ここで公開しておきます。
記事タイトル | 担当者(敬称略) |
---|---|
第1章「始める」 | |
花映塚マニュアルリライト | めど |
キャラ紹介 | めど |
「ミスミス」からはじめる花映塚 | めど |
STG 初心者が上達するには? | 夕姫 |
他の東方原作 STG と花映塚の意識配分の違い | そにつく |
第2章「究める」 | |
ショットから要素の繋がりを追う | めど |
調整被弾の仕組み | めど |
「防御型」という立ち回り | めど |
「リソース」概念と花映塚対人戦の戦局分類について | てんこ |
博麗 霊夢 | nishi |
霧雨 魔理沙 | 柿桜 |
魂魄 妖夢 | そにつく |
リリカ・プリズムリバー | Ardan |
メディスン・メランコリー | halogen |
風見 幽香 | ふぁー |
小野塚 小町 | てんこ |
四季映姫・ヤマザナドゥ | てんこ |
スコアアタック概論 | FSX, yet |
スコアアタックキャラ別攻略 | FSX, yet, Dagoth2hu |
LunaticCPU 撃破ガイド | FSX |
花映塚縛りプレイガイド | るろるぅ |
RTA で 楽しく 遊ぶ | ping値 |
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クレジットでスペシャルサンクスとして挙げたCyrus, Kneg, Skalim, Zilさんは、「海外の花映塚レポート」のインタビューに答えてくれた方々です。nin=sceneさんには私が書いた記事の校正やコメントをしてもらいました。ありがとうございました!
今回はこのくらいで。次回から記事の中身に入っていきます。ではまた。